研究概要 |
本研究の目的は、長いπ共役系を有し、非線形光学特性が大きいとされるカロテノイドに注目し、その非線形特性のexcited-state enhancement、すなわち、実励起による非線形性の増大を生じさせ、非共鳴域で高速に応答する大きな非線形特性を得ることである。 本年度は、1.カロテノイド溶液の光ヘテロダイン検出フェムト秒時間分解光カー効果測定系の試作ならびにその測定、2.2光子励起過程を含むカロテノイドの非線形光学過程のメカニズムの解明を行った。 ●1.フェムト秒チタニウムサファイアレーザー(波長〜780nm,パルス幅〜90fs)を光源とする光ヘテロダイン検出フェムト秒時間分解カー効果測定系を試作し、高感度でカロテノイド(β,β-カロテン、カンタキサンチン)溶液の非線形光学特性の測定を行った。この結果、カロテノイドはフェムト秒に応答する大きな負の非線形性を持つことを明らかにした。 ●2.カロテノイドの大きな負の非線形性発現メカニズムを調べるため、フェムト秒時間分解カー効果の入力光強度依存性測定を行った。その結果から、カロテノイド溶液は、2光子過程に起因した、フェムト秒に応答する負の実効的3次非線形を持つことを見出した。また、この非線形性は、ポンプ光とプローブ光によるポピュレーショングレーティング効果によるものであることを明らかにした。これは、カロテノイドがexcited-state enhancementされうることを示唆する結果である。そこで、現在、チタニウムサファイアレーザーの光第2高調波を用いて、カロテノイドのexcited-stateenhancement実験に着手したところである。
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