研究概要 |
ダイヤモンド薄膜においては,基板と薄膜は蒸着の初期に核が発生した点でのみ接していることが従来から確認されている。このため薄膜生成にあたっては,薄膜の核すなわち悪発生密度を増加させることが重要となる。ここでは薄膜付着強度の向上策への分子動力学アプローチとして,原子レベルからの核成長モデルを開発し,ダイヤモンド薄膜形成過程における核成長の三次元微視的メカニズムの解明を目的としたコンピュータシミュレーションを実施をした。得られた実績を要約して以下に示す。 1.薄膜形成に及ぼす基板傷つけ処理の影響を解明することを目的として,傷つけ処理を施したシリコン基板と反応ガスからなる核成長三次元モデルを考案し,シリコン基板上に発生および成長するダイヤモンド核を対象とした数値シミュレーションを行った。同モデルにおいては,原子間相互作用を表すものとして経験的な2体間ポテンシャルであるMorseポテンシャルを用いた。その結果,核成長過程を数値的に明らかにした。 2.薄膜-基板間の付着強度を数値的に求める場合等においては,上記のような経験的な原子間ポテンシャルではなく,より正確に現実の物理体系を記述したポテンシャルを用いることが求められる。そこで量子力学に基づく原子間ポテンシャルを用いる分子動力学法(第一原理分子動力学法)のダイヤモンド薄膜への適用を念頭に,多数の文献を調査・検討することにより同分子動力学法への理解を深めた。その結果,密度汎関数法に基づくCar-Parrinello法が特に有効であることがわかった。
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