研究概要 |
構造用接着剤として多用されているゴム変性エポキシ系接着剤により金属材料を接着接合する場合,その接着剤層の厚さは,数十μmから100μm程度となっている.本研究においては,金属材料として機械構造用炭素鋼を取り上げ,金属突き合わせ接着試験継手の引張り負荷に対する強度に及ぼす接着面の寸法効果について実験により検討した.特に接着面積が小さくなると,接着剤に添加されているゴム粒子や金属粉末粒子が接着強度に影響を及ぼすことが考えられる.また,接着界面の端部における応力の特異性が強度に及ぼす影響も大きくなると考えられる.そこで,JISに規格化されている一般的な寸法の試験片と,さらに微少な接着面積の試験片に対して実験を行い,接着強度を比較した.その結果を以下に示す. (1)突き合わせ接着継手の強度は,一般的な数十ミリオーダー以上の被着体寸法に対しては,100μm以上に接着層厚さが大きくなると強度が低下する傾向がみられた.破壊形態は,接着層厚さが薄いときは接着剤の凝集破壊であったが,厚くなると接着剤の被着体金属との間の界面破壊が混在していた.また,厚い場合には,接着剤のバルク試験片の破面に近い,凹凸の激しい破面であった. (2)接着層厚さを50μmに統一し,被着体の接着部の寸法(中実丸棒の場合は直径,円筒の場合は肉厚)を10mm以下1mmまで小さくした場合は,接着面寸法に対する相対的な接着層厚さは大きくなるが,継手強度にはほとんど変化がみられなかった. (3)微視的な破面観察の結果,2〜3μmの間隔で充填粒子の凝集破壊とエポキシ樹脂の脆性破壊の混在した破壊の様相を呈していた.
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