研究概要 |
本研究は,「超音波による複合材料界面特性評価システム開発のための基礎理論」の確立を目的としている。本年度は,まず逆問題解析に使用する順解析データの整備を行い,引き続き材料中の超音波の振幅減衰に関する測定データから逆問題解析により界面特性を推定する手法について検討を行った。 【順解析データの整備】 昨年度までで,「不均質界面層を有する粒子・繊維強化複合材料」の弾性波動伝播特性(位相速度,振幅減衰)に関する順解析は終了している。本年度は,昨年度までの順解析データの補完を目的に,「はく離を有する繊維強化複合材料」および「界面にすべりを許した繊維強化複合材料」の弾性波動伝播特性解析をそれぞれ境界要素法と理論解析により行った。その結果,界面特性は超音波の伝播特性に大きな影響を及ぼすことが明らかになった。特にはく離は,ある程度(はく離部分の中心角45°以上)になると,超音波の波動伝播特性に極めて大きな影響を及ぼす。また繊維と母材の接合部分が小さい場合(はく離部分の中心角170°以上)には極めて強い共振現象が発生し,超音波の伝播速度および振幅減衰にも鋭いピークが現れる。 【逆問題解析手法の検討】 本年度新たに得られた順解析結果および昨年度までの順解析結果を基に界面特性の逆問題解析プログラム(出力誤差法,共役勾配法,最小分散推定法,カルマンフィルタ)を作成した。現在,これらの各逆問題解析手法を用いてコンピュータ上で数値実験を行い,精度,計算時間の面で最も有効な方法を選定中である。
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