研究概要 |
本研究は,物体表面より測定されたひずみ情報を基に,計算機を用いた数値解析的処理を施すことにより,構造物中に存在するき裂等の欠陥の位置および形状を同定するき裂逆問題解析システムを開発することが目的である.申請者らのこれまでの研究により,半無限体表面に垂直にはいった3次元表面き裂の同定問題,および傾斜表面き裂の内部形状同定問題の解析を行い,数値実験を通し提案する手法の有効性を検討した.しかしながら実際に試験を実施する現場においては,計測されるひずみデータが,常に精度よく得られるとは限らない。そこで,本研究では,実際の計測値を模擬した誤差を含むひずみ情報を与え,そのデータに基づいて3次元表面き裂の同定問題の解析を行った.計測誤差としては,一様乱数を用いて,順解析によって得られる計算値に1%,5%,10%の誤差を混入させた。き裂形状・寸法の高精度な同定を行うために,ひずみ測定点数および測定位置などの検討を加えた.また,傾斜した3次元表面き裂の同定実験も同様な誤差を含むデータを用いて模擬試験を行った.その結果,表面き裂の傾斜角度の同定精度が比較的良くない場合においても,表面き裂の荷重方向の投影面積は,比較的精度良く推定できることが明らかとなった. また,本研究で採用している逆問題解析手法は,通常,順問題の解析に用いられる計算力学的手法(ここでは体積力法)を中心に据えたものであり,それの反復計算により解が求まる.したがって,逆解析を種々の問題へ応用していくためには,ひずみ場の順解析に用いる解析法を発展させていくことも重要である.本研究では,体積力法の特異積分方程式を厳密に解く方法(未知関数を基本密度関数と多項式の積によって近似する方法)を,各種き裂および介在物の干渉問題にも応用した.
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