研究概要 |
アーク放電プラズマジェットCVD法はダイヤモンドを高速に合成できる特徴をもつが,厚さが不均一で結晶性の不均質な膜が生成しやすい欠点がある.この欠点を改善するためには,生成されるプラズマの状態を一様にすることが必要である.本研究は,イオンおよび電子を含む電離気体であるプラズマが磁場の影響を受けることを利用し,電磁コイルを備えたアーク放電プラズマジェットCVD装置を設計,試作し,アークおよびプラズマジェットに磁場を印加してダイヤモンド合成を行い,得られる膜の形状や結晶性について評価し,アーク放電プラズマジェットCVD法によるダイヤモンド合成に与える磁場の影響を検討したものである. 試作した磁場援用アーク放電プラズマジェットCVD装置は直流プラズマト-チ,真空チャンバ,基板冷却ホルダおよび電磁コイルから構成され,最大830ガウスの磁場をプラズマジェット軸方向にその中心位置を変化させて印加できるようにした.まず,肉眼観察により,プラズマジェット生成部に磁場を印加するとプラズマジェット径は広がることを確認した.このときの基板の温度を熱電対で測定した結果,基板温度は基板中心部で一様になることがわかった.そして,磁場を印加してダイヤモンド合成を行うと,磁束密度の増加とともに膜厚および粒径が均一で,結晶の配向の変化が小さい均質な結晶性を有するダイヤモンド膜が合成されることを明らかにした.これらの基板温度や得られるダイヤモンドの均一化は,磁場の印加によりプラズマジェット内のアークが回転運動することにより,プラズマの温度が一様になり,ダイヤモンド合成に寄与する活性種の分布が均一になるためと考えられる.
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