研究概要 |
一般に旋削加工における加工行程は,能率向上のための荒加工から,高精度を満足するための仕上げ加工へと進む複数のパスにより実施され,工具が被削材表面を繰り返し通過するため,被削材全体の温度が上昇して寸法精度,加工精度に影響を及ぼす.そこで本研究では,旋削加工により発生する熱に起因し,刻々と変化する被削材表面の温度分布を旋削加工中に熱画像装置により測定し,工具パスによる時間変化を調べ,また,計測結果を基に,切削温度に関する非定常軸対象温度場の解析モデルを構築し数値解析を行い,工具パスに伴う被削材内部の温度の時間変化を解析し考察を加えた. まず,切削条件として,切削速度,送り,切り込みを変化させ,各パスにおける被削材表面温度の時間変化を熱画像装置により計測した。実験結果から得られた温度場を基に,構築した解析モデルの入熱条件を設定し数値解析を行ったところ,実験値と解析値の被削材表面温度の時間変化,ならびに被削材表面全体の温度分布ともよく一致した.実験,数値解析の結果,工具パスにおける被削材内部の温度分布は,パスを重ねるにつれて被削材内部に熱が蓄積されるのが確認され,最も温度の高い部分が熱源である工具刃先の位置となっているが,被削材内部の半径方向の温度勾配は熱源の近傍以外は小さくなっていた.また,切削終了点付近では,チャック保持部に熱が流出するため被削材表面中央部と比べて温度が低く,そのため,温度の高い部分が切削部付近に限定されているのが認められた.さらに,送りが被削材温度に与える影響は大きく,送りの増加により表面温度は低くなることを確かめた.
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