研究概要 |
本研究では、単結晶ダイヤモンド工具を用いた微小切削における工具刃先温度の測定を行った.工具のすくい角は-5°,切込み9.4μm,切削幅1mm,切削温度200〜400m/min,被削材は銅とチタンとした.温度計として,カルコゲナイドガラス光ファイバと赤外線検出素子InSbを組み合わせたものを新たに作成し,実験に用いた.ダイヤモンドは赤外域まで透光性を有するため,切削時に工具と切りくずとの接触面から輻射された赤外線は工具内を透過し,工具裏面に達する.この赤外線を,あらかじめ工具シャンク裏面からダイヤモンド裏面まで開けた小孔に挿入した光ファイバで受光し,赤外線検出素子へ伝送することにより温度測定を可能とした.また,工具と切りくずとの接触面の大きさが不明確であるため,波長フィルタを用いて2色温度計を構成して視野欠けの影響を取り除いた.温度校正は,一定温度に加熱した被削材試片を用いて行った. 実験の結果,本方法によって,切削における工具と切りくずの接触面の温度上昇に伴う赤外線輻射光を明瞭に測定できた.いずれの切削条件でも,すくい面温度は切削開始とともに急激に上昇し,ごく短時間のうちに定常的な温度に達する.切削速度が200,300,400m/minの場合のすくい面温度は,被削材がチランの場合でそれぞれ約300℃,400℃,440℃,被削材が銅の場合でそれぞれ約120℃,140℃,160℃となった.チタンの切削抵抗が銅の約1/2であるにもかかわらず刃先温度が高いのは,熱伝導率が小さく切削熱が拡散しないためと考えられる.しかし他方,銅の場合には,高い熱伝導率のためにすくい面温度は低いが,被削材の温度は上昇していることが考えらえる.
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