研究概要 |
圧電素子の急速変位により発生する衝撃力を駆動力とする,数mm×数mmの広い位置決め可能範囲とサブマイクロメートルオーダの高い位置決め分解能を持つ駆動機構が開発された.この機構の外寸は80(W)×100(L)×25(H)とコンパクトであるので,真空チャンバなどの狭小空間内を作業領域とすることが可能である.以下に研究結果を示す. 1.それぞれの圧電素子の駆動波計を変化させることで,発生する駆動力のベクトルを適宜調整した結果,平面三自由度(X,Y方向並進+γ方向回転)に対しての移動が可能であった.同様に自由曲線上をトレースすることも可能であった. 2.静電容量型変位計により,機構の位置および姿勢を測定した.本機構の位置決め分解能はX,Y方向に対して0.05μm,γ方向に対して0.6"であった.この値は測定器の性能と同程度である. 3.機構の位置および姿勢を上述の測定システムにより逐次観測し,駆動力のベクトルを修正することで,機構の位置および姿勢のフィードバック制御を行った.ここでは運動誤差の補正を行った結果,X軸に沿う直線運動(移動範囲【plus-minus】25μ)時に発生する運動誤差:Y方向シフトとγ方向ヨ-イングは(1μm,20")から(0.03μm,0.6")まで減少した.また同様にγ方向の回転運動時(回転範囲【plus-minus】250")に発生する運動誤差:XおよびY方向シフトは(1.5μm,2.0μm)から(0.03μm,0.03μm)まで減 4.摺動面との摩擦状態は本機構の位置決め特性に極めて大きな影響を与える.ここではZ方向(鉛直方向)に変形する圧電素子を配置し,この圧電素子の変形パターンにより垂直抗力を変化させ,摺動面との摩擦力の大きさを制御した.この結果,駆動機構の位置に伴う摩擦力変動の影響が小さくなり,オープンループ制御下における位置決めのばらつき誤差が減少した.
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