研究概要 |
ソリッドモデリングの集合演算などに利用される,数値計算の結果によって位相情報の変更を伴う幾何アルゴリズムでは,数値計算に伴う誤差が原因となりアルゴリズムが破綻してしまう可能性がある.この問題に対して,"完全な安定性"を実現する(すなわちアルゴリズムの破綻を完全に防止する)という立場から,演算に伴う誤差を排除した整数演算をCADに利用される幾何アルゴリズムに応用するという研究を行った. 本研究では,(1)整数演算を利用するために問題を離散化する.(2)数値を表現するためのデータ長をある範囲に制限するという考えを,多面体を対象とする三面図からの立体復元及び隠れ線消去アルゴリズムへの応用を検討した.多面体を対象とする三面図からの立体復元では,予め三面図上の頂点として陽に表現されている座標値をもとに,演算に誤差を伴わない整数演算を利用することで,数値計算に起因する矛盾を完全に排除することができることが判明した.隠れ線消去アルゴリズムに関しては,アペルのアルゴリズムに対する整数演算の適用の可能性を検討した.アペルのアルゴリズムでは,不可視数の変化に非常に複雑な分類を必要とする場合があるが,整数演算及びあらゆる縮退を一貫して排除することのできる記号的摂動法を利用することにより,数値計算が原因となる矛盾および複雑な分類を排除できることが判明した. また,幾何アルゴリズムが工学的かつ工業的に有用であるためには,円弧や球面などの二次曲線・曲面を含む形状を処理できることが必要である.このような形状に関しても,本研究で利用した考えを応用するための基礎的な理論を得た.
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