研究概要 |
液面で気泡が崩壊する際、上方に数個の気泡が噴出されることがある。この現象は蒸留過程における液滴随伴の原因とされるなど従来はその弊害のみが取りざたされてきた。しかし、この現象は気泡の大きさが同じならばいつもほぼ同じ大きさの液滴が噴出されるなど、液体微粒化の観点から見れば極めて有益な特徴を有する。したがって、原料融液の液面で気泡を崩壊せしめ噴出された融液滴を上方で凝固・回収することとすれば、粒径のそろった小径球状粒子の製造に好適であると考えられる。このような観点から本研究では、まず、液面での気泡崩壊に伴う液滴噴出現象について通常液体を用いた実験により詳細に調べ、噴出される液滴の数や大きさならびに噴出速度に及ぼす粘度や表面張力などの液物性の影響や気泡径の影響を具体的に明らかにした。この結果を踏まえて温度制御された融液層液面より噴出された融液滴を凝固させつつ回収する装置を試作し、粒子生成に好適な条件について検討した。試料を金属とした場合には液面の酸化のため本装置では必ずしも良好な結果は得られなかったが、パラフィンとした場合には適切な温度や回収条件の設定により粒子の生成が可能であった。得られた粒子を顕微鏡で分析して、粒子はすべてほぼ球状で、かつ粒子径のばらつきが従来のアトマイズ法などよりも著しく少ないことを明らかにした(例えば気泡径1.6mmでは、平均粒径79.1μmに対し標準偏差は10.9μmであった)。 これらの結果から、この方法を用いれば原料融液からほぼ均一な小径球状粒子を比較的簡便に製造し得ることを具体的に示した。なお、以上の成果の概略について第5回微粒化シンポジウム(平成8年12月,71頁-74頁)において速報講演として発表した。また、さらに検討を重ねた結果についてThe 7th International Conference on Liquid Atomization and Spray Systems(平成9年8月,Seoul)において発表する予定である。
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