研究概要 |
本研究ではHele-Shawセルと呼ばれる2枚の平行平板間に高粘性流体を充填したものに,低粘性流体を注入したときに生じる粘性指状体の成長現象について考察した.非ニュートン流体の粘性指状体はガス・アシスト・インジェクションという成形過程において観察されている. ここでは低粘性流体に空気を,高粘性流体に非ニュートン流体である高分子溶液を使用して実験を行った.高分子流体はポリアクリルアミド水溶液とカルボキシメチルセルロース水溶液の2種類の水溶液を使用した.これらはともに粘度のせん断速度依存を持つ.また前者は強い曳糸性を示すが,後者はそのような性質は持たない. 実験の結果,非ニュートン粘性指状体を高粘性流体に用いた場合には,ニュートン流体の場合にはみられない現象が観察された.ここで得られた結果は以下の通りである.(1)ニュートン流体の場合には指状体が密な構造を取るのに対して,,非ニュートン流体の場合には,せん断粘度のshear-thinning性が'遮蔽'の効果を増大するために粘性指状体は分岐を繰り返しながら成長し,その構造は開いた構造を取る.次元解析の結果から,これがフラクタル構造であることが分かった.(2)指状体の界面では引っ張り変形が生じており,ポリアクリルアミド水溶液のように,流体がstretch-thickening性のような伸長粘度特性を有する場合には,見かけの表面張力が増大し,界面の安定性が促進されることが分かった.
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