研究概要 |
すでに気泡の膨張・収縮を利用して流体に運動エネルギを与える方法はバブルジェット型プリンターで実用化されており,ノズル径数十ミクロンで液滴を噴射可能である.本研究はこの原理をミクロ領域での液体輸送に応用するための基礎的研究として位置づけられ,容器内における単一および複数気泡の挙動に関して研究を行った.主として局所的エネルギの供給により急激膨張を始める気泡と容器あるいは自由表面との相互干渉について解明を試みた.得られた成果を以下に示す. (1)剛体壁近傍の単一気泡は崩壊末期の短い時間に壁面に向かうマイクロジェットを形成するが,位相を有する隣接気泡を配することにより,ジェットの向きおよびジェット速度をコントロールできる可能性を示した.すなわち気泡の持つ運動エネルギを流体輸送システムとして利用する場合に問題となる壁面への繰り返し衝撃力は気泡-気泡相互干渉を用いて軽減できることを理論的並びに実験的に示した. (2)気泡サイズが極めて小さい場合には相対的に表面張力の効果が大きなり,気泡の非球状変形にも影響を及ぼし,さらに運動時間特性が変化することがわかった. また,問題点として対象となる現象が微小領域で生じる場合にはレイノルズ数が小さくなることから,数値解析では粘性の影響を考慮する必要があること,実験的にはポンプとしての性能特性を調べるための圧力計測が困難であることが挙げられる.
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