研究概要 |
本研究では,円形ダクトの途中1ヶ所に設けた偏心円形スリット(軸方向長さが極端に短い円形断面膨張空洞で,その中心がダクト軸から偏心しているもの)の消音効果について,主に実験的に検討した。実験装置は,平面波および(1,1)モード波が出力可能な音源を持つ入射側ダクト,偏心スリット部(その直径,幅および偏心量をパラメータとする)および,ダクト径方向に可動なマイクロホンを持つ透過側ダクトからなる。この装置を用いて,偏心スリットでの音波の透過率を求めた。得られた結果は,以下のとおりである。 1.偏心スリットに平面波が入射する場合に透過率が2つの異なる周波数において減少すること,すなわち,異なる共鳴周波数を持つ2個の共鳴形消音器を重ね合わせたような透過特性が得られることが分かった。ダクト中心から偏心スリット内へ向かって真直に入射した音波が偏心スリットの最深部において正反射するものと考えることによって,この現象をほぼ理解することができた。 2.偏心スリットに(1,1)モード波が入射する場合にも,透過率は2つの異なる周波数において減少した。ただし,偏心の向きと音波の周方向での節とが一致する場合には透過率最小値はほぼ0となるが,偏心の向きと音波の周方向での腹とが一致する場合には透過率最小値は0にはならなかった。後者では,偏心スリットにおいて平面波が構成され,これが透過波として伝搬したものと考えている。
|