研究概要 |
本研究では、氷晶の形態,特性をサブミリからナノメータスケールに渡る広いダイナミックレンジの計測を行い,マクロに現れてくるセルラ-氷晶やデンドライト氷晶の形態形成機構を解明するため,光学顕微鏡による水溶液の凝固実験と原子間力顕微鏡(AFM)による霜の観察を行った. 水溶液の凝固実験では,方向性凝固装置と過マンガン酸ナトリウム水溶液の吸光性を利用し,水溶液濃度と氷晶の3次元形態の観察を行った.これにより,5wt%以下の水溶液では,セルラ-状の凝固が起こり,凝固速度が速いほど,氷の間で濃縮される溶質量が増加すること,ある速度以上になると凝固形態に異方性が強く現れ,三角形断面の冷却面を除く一辺が優先的に成長し残りの一辺は殆ど成長しないこと,下面から冷却されているにも関わらず,縦長の三角形氷ができることが観察された.この異方性は,六角柱構造をした氷の結晶構造に由来するものと理解された. 原子間力顕微鏡による霜の観察は,AFMのカンチレバ-は熱膨張率の異なる2相構造であるため,霜に接触した場合と僅かに離れた場合で熱変形が大きく,アプローチから計測を自動的に行なわせることが難しい,環境の湿度を十分に制御しないと観察中に氷が成長しずぎてAFMの観察範囲を越えてしまうという理由で非常に困難なものであった.僅かに観察された結果は,銅製ステージ上で霜の端が層状に進行し霜領域が拡大していく様子,端部にセルラ-状の構造が見られ,そのスケールは1μm以下であることという点であった.水溶液中でのセルラ-凝固のスケールは10μm以上であり,気相中で生成する氷晶の構造スケールはさらに小さいことが分かった.
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