研究概要 |
大気中のCO_2濃度の増加を抑制するために火力発電所等の大量発生源から分離回収した液体CO_2を深海底に貯留する方策は,深海底の超高圧力条件下でCO_2クラスレートハイドレート(CO_2包接水和物)と呼ばれる固体水和物が液体CO_2と海水の界面に形成され,CO_2が海洋中に拡散することに対して抑制する効果を有すると考えられているため,有望なものと考えられている.しかし,液体CO_2と海水の界面に存在する固体水和物を通してCO_2が海水へ溶解拡散する物質移動機構については不明で,特にこのことを固体水和物の生成過程とその特異な構造の関連を明らかにすることが基礎的に重要であると考えられる.本研究は,水分子とCO_2分子を構成する原子間にポテンシャルを与えるCO_2クラスレートハイドレート形成過程の分子動力学シミュレーションを行った.初期条件として,まず,368個の水分子をランダムに配置した場を形成し、これにCO_2クラスレートの大ケージの中心位置にCO_2分子を配置した.その後,分子動力学シミュレーションを行い,水分子が水素結合を行い,これによりケージが構成され,CO_2クラスレートが形成されていく過程をコンピュータシミュレーションにより再現することができた.また,このシミュレーションにより得られるデータベースを用いて,CO_2クラスレートがなぜ形成されるのかを考察を行い,CO_2分子間に形成される狭いポテンシャル領域が,水分子の運動を2次元の範囲に限定し,これにより5員環,6員環が,最終的にはCO_2クラスレートのネットワークが形成されることを分子論的な視点から明らかにした.
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