研究概要 |
現在,地球環境問題への関心は深まる一方であり,人工生成物およびエネルギ消費の増大が環境破壊の根源と考えられ,多方面にわたりその改善が急がれている.このような状況の中,これまでに高熱伝達・温度均一化素子として注目されてきたヒートパイプは,自然の力を利用するという観点から,今後,省エネルギならびに環境保全に則した熱輸送機器として再注目されると思われる.しかし,従来の毛管力利用のヒートパイプは長距離熱輸送が困難であり,また体積力利用のヒートパイプは特有の熱整流作用により熱輸送方向が制限されるという欠点を有しており,姿勢に無関係な長尺ヒートパイプの開発が望まれている.そこで,我々は,BaerおよびMidoloにより発案された浸透ヒートパイプに注目し,その開発を目指している. 本年度は,既存の装置を改良し,液-液系の物質伝達に関する実験を行い,従来の熱伝達とのアナロジ的考察および気-液系における実験式と比較することにより,液-液系物質伝達の相関式を作成することができた.さらに,得られた生理式に基づき,浸透ヒートパイプ熱輸送量を定式化し,過去に行われた熱輸送実験における値と比較検討を行った.結果として,得られた相関式により液-液系物質伝達量が±30%程度の誤差内で整理されることができた.また,浸透現象に比べ物質伝達の影響が非常に大きいことが明らかにされた.熱輸送解析では,満足いく結果は得られなかったものの,今後の研究に有意義な結果が得られたものと考えている.
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