研究概要 |
準安定相・アモルファス等の新素材の製造から,人間の生死に関わる生体試料の凍結保存まで,熱的に非平衡である過冷却凝固が基本となる技術分野は少なくない.従って,凝固の本質の理解が極めて重要となる.本研究は,壁面冷却によって生ずる非一様な過冷却状態からの凝固を対象として,ミクロ組織(形態と組成)とマクロ伝熱を連成した速度論を確立するものである。 2成分系(Bi-Sn,Pb-Sn)を供試した実験的研究により,過冷却が崩壊して伝熱支配へと移行する凝固の過程や各過程におけるセル状や樹枝状の結晶形態,溶質濃度のミクロ偏析などの詳細を追突し,以下の成果を得た. (1)過冷却を伴う合金融液の凝固過程は,[1]非一様な過冷却場の形成,[2-1]壁面核生成に始まる結晶の自由成長と[2-2]結晶の肥大化による非平衡凝固,[3]壁面冷却にもとづく伝熱支配での平衡凝固の3つの素過程よりなることが明らかとなった. (2)結晶形態(結晶軸の間隔,側枝の乱れの波長等)の顕微鏡観察とEPMAを用いた凝固相の定量・定性分析により,凝固過程と関連づけた凝固のミクロ機構が動的平衡状態図上で理解された. (3)実験的知見をもとに,過冷却を伴う融液凝固のモデルが提示され,温度場と結晶形態の経時変化および凝固相の組成分布に対してシミュレーション計算を行い,実験値との比較により当モデルの妥当性が示された. 以上により,過冷却を伴う合金融液の凝固に対して,輸送現象にミクロな凝固機構を組込んだ速度論が確立された.
|