研究概要 |
本研究では,最近その有効性が周波数領域仕様の制御問題で確認されたLMIツールを,より実用的な時間領域仕様をもつロバスト制御問題に適用し,その可能性について検討した.その結果,以下の成果を得た. 1 線形行列不等式(LMI)に基づいた時間領域仕様の統一的ロバスト解析理論の構築 構造的変動を持つ制御対象が、時間領域で記述された種々の仕様をロバストに満たすための条件を与えるような,LMIに基づく統一的な枠組を構築した.具体的には,これまで個別に提案されてきた,時間領域仕様を記述するのに適した二次形式リアプノフ関数と,ロバスト性を補償するのに有効な入出力スケーリングとを,フィードバック系の有効提起性(Well-Posedness)の概念を用いて統一された観点から結びつけ,LMI条件を導出した. 2 時間・周波数領域仕様をもつロバスト制御系設計問題の数値最適化問題への帰着 上記解析理論と既に提案されている周波数領域統一解析理論とを融合し,時間領域での過渡応答仕様と周波数領域での定常応答仕様とを同時に満たす閉ループ系をLMI条件で書き下し,ロバスト制御系設計問題を線形代数問題として定式化した.さらに,この問題の解である補償器パラメータが存在するための必要十分条件を求め,その条件が満たされた場合の全ての解をパラメトライズする方法を提案した.このようにして得られる条件は行列不等式で与えられ,それで定義される数値最適化問題を解くことにより補償器の設計が可能となる. 3 凸計画法を活用した設計アルゴリズムの開発 項目2の最適化問題がLMIで記述される場合は凸計画法を適用し,非線形な行列不等式で表される場合は凸最適化反復法などを用いて複数のLMI問題へと帰着させることにより解を得る方法を示した.また,提案した設計法の有効性を設計例により確認した.
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