研究概要 |
近年,さまざまな工学的な問題においてカオス現象が起こることが明らかにされ,さらにカオスを積極的に利用する試みがなされている.特に,米国のOtt,GrebogiおよびYorkeによって提案されたOGY法と呼ばれる制御法が注目されている.OGY法は,カオス挙動を示す系に対して,ストレンジアトラクタ近傍に存在する不安定な周期軌道を安定化させようとするもので,従来の制御法と異なり,不安定多様体の方向に対してのみ制御力を作用させ,着目した軌道を安定多様体に沿って小さな制御力で周期軌道に収束させるものである.また,OGY法は,米国のShinbrotらによって短い時間で目標軌道に収束するように改良され,この改良された方法はSOGY法と呼ばれている. 本研究では,まず,ロボットアームを振子によってモデル化し,あらかじめ目標軌道を描くように入力を与えるフィードフォワード制御と,目標軌道と実際の軌道の違いを修正するフィードバック制御を受ける場合を考えた.フィードバックゲインが小さいとき,振子は目標軌道からはずれ,カオス的に運動する可能性がある.そこで,数値シミュレーションにおいて,OGY法およSOGY法のカオス制御法を適用して振子が目標軌道を描くように制御を行った.その結果,OGY法では目標軌道を安定化するのに時間がかかる.また,SOGY法ではモデル化誤差の影響により正しく制御できなくなるなどの欠点がみられたものの,これらのカオス制御法がここで取りあげた制御系に対しても有効であることを示した.さらに,上で述べた欠点を修正するようにOGY法を改良し,新たなカオス制御法を提案した.
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