研究概要 |
本研究では,液体内を移動する小形機械を実現するための基礎研究として,摺動部を持たない簡単な構造で小形化が容易な,容器内の気体の温度変化に伴う体積変化と相変化を利用して浮力を変化させ,液体内での垂直水平移動を実現する移動用小形アクチュエータの提案と試作を行い,小形化の諸特性を検討した.本研究で実施した内容と,得られた知見は以下の通りである. 1.浮力変化と垂直移動特性の検討 小形円筒容器内の熱線に間欠的に電力を供給し,その時の容器の浮力変化を測定した.実験は,相似形で大きさの異なる容器について行い,液体内(水中)における浮力変化や実際の移動特性を比較した.また,内部気体の種類を変えた場合や,沸点の低い液体を容器内部に充填した場合について同様の実験を行い,浮力や移動速度変化の比較検討を行った.その結果,本方式は小形化に有利であり,充填する気体の種類を工夫することにより,小形機械の液体内移動用アクチュエータとして十分に利用できることを確認した. 2.モデル化と水平移動方式の検討 内部気体の温度変化,体積変化および伝熱量を実験結果をもとにモデル化し,浮力作用や移動速度の数学モデルを作成し,小形化における諸特性の検討を行った.その結果,本方式の小形化に対する一定の限界を予想することができ,本方式は数ミリ程度の小形機械の移動原理として適していることを指摘した. なお今後の課題として,水平移動に関して,気体の体積変化を利用して進行方向から液体を吸い込んで,後方へと液体を噴射する,いわゆる噴射ポンプ作用を利用することを提案した.しかしこのポンプ方式を実験的に確認するに至らなかった.また熱線の代わりにペルチェ素子を用いて,素子の発熱吸熱にともなう能動的な熱移動を促進させることにより,より応答性の良い移動機構の実現も期待できる.
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