研究概要 |
従来、各々独立に研究が行われてきた誘電体、磁性体、超伝導体等の機能性酸化物を、遷移金属酸化物としてひと纏まりにとらえ、これらの電気・磁気的特性を統一的に解釈することを目的として以下の研究を実施した。 (1)対象材料の選定。ペロブスカイト構造を持つ遷移金属酸化物の中で、人工格子を形成させる為、格子定数、熱膨脹係数等のパラメータを考慮してヘテロ成長が期待される組み合わせを選定した。具体的には誘電体;MTiO_3(M=Ba,Sr,Ca,Pb),ZrPbO_3,LiNbO_3(ペロブスカイト類縁)、磁性体;M'FeO_3,M'MnO_3,M'CoO_3(M'=Ba,Sr,Ca,La etc.)を選定した。 (2)レーザアブレーションを用いたMBE成膜法による人工格子の形成。 先ず誘電体同士、磁性体同士等の組み合わせによる人工格子を形成し、電気・磁気特性の評価を行った。磁性体人工格子として、磁化特性の向上を狙った歪磁気人工格子や、SrCoO_3(強磁性)/SrMoO_3(常磁性)超格子により、積層周期-磁化率から磁性発現の最小サイズを検証した (3)複合機能人工格子の創成。 強誘電体/強磁性体等を組み合わせた新材料を創成した。人工格子を形成する層の組成および厚さを変化させたときの、電気・磁気特性(誘電率、磁化率の温度変化等)の変化を調べた。さらに積層周期の変化に対応する物性測定により、誘電体の電子分極および磁性体のスピンとの相関距離を明らかにした。 (4)計算化学による材料設計。 分子動力学計算によるペロブスカイト結晶構造変化(構造相転移)を検討した。そして従来経験法則によってのみ知り得た結晶構造および物性を計算化学的手法により予測可能とする。
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