研究概要 |
自然酸化膜の付いたSi(100)p型シリコン基板に対し,電子サイクロトロン共鳴プラズマCVD装置により,多結晶シリコン薄膜を基板バイアスを変化させて堆積させた.多結晶シリコン薄膜は水素90%,シラン10%,全圧力0.4Pa,マイクロ波パワー300Wの条件で堆積させた.基板バイアスは-150〜50Vまで変化させた.基板バイアスが50Vのとき結晶性が良く,グレインサイズも大きく約200nmとなった.そこで,基板バイアス50V,0V,-50Vのとき,堆積速度から換算して100nm程度の膜厚になる多結晶シリコンを堆積させた.この表面を大気に暴露せずに走査型トンネル顕微鏡とトンネル分光法により,表面の評価を行った.基板バイアス0V,-50Vでは,直径数百nmのクレータ状の穴が観測された.一方,基板バイアスが+50Vのときは,クレータ状の穴が全く観測されなかった.一面均一な2〜3nmの粒子が観測された.さらに,H終端したSi基板に対しても同様な観測を行った.その結果,基板バイアスを変化させてもクレータ状の穴は観測さなかった. 以上より自然酸化膜があるSi基板の場合,イオンで酸化膜が一部無くなったところでは多結晶シリコンが成長してないことが考えられる.そこで自然酸化膜をSTMにより電界蒸発させ一部酸化膜を除去した基板を作製し,先と同様な実験を行った.自作の位置決め機構が不完全なため,この結果により核の発生密度が制御できるかを確認するまでには至らなかった.しかしながら,上記自然酸化膜の付き具合で核の成長が制御できる可能性は確認でき,当初の目的は達成できたと考えられる.今後の課題としては,核発生密度を制御して膜形成することと,実際のプロセスで効率よく制御する方法を見いだすことが考えられる.
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