サブミリ波帯は電磁波スペクトラムにおいて電波と光の中間に位置し、その研究開発状況は電波及び光の領域と比較して格段に遅れているのが現状である。サブミリ波は現在、電波天文学、分子分光学、地球環境計測等の分野に応用されているが、これらの分野においてサブミリ波が用いられる最大の理由は、サブミリ波帯電磁波のフォトンエネルギーが各種分子の回転準位間のエネルギーに極めてよく対応していることが挙げられる。以上の応用分野においては、スペクトル情報の抽出のみに重点がおかれているが、位置情報も含めてスペクトル情報を取得し画像化することが可能であれば、測定対象分子の分布濃度あるいはその分布濃度状況の時間変化に関する有益な情報を得ることができると考えられる。このようにスペクトル情報を画像化する手法はスペクトロスコピック・イメージングと称されている。本研究ではサブミリ波帯スペクトロスコピック・イメージングシステムの構築を目的とし、研究を行った。主要な成果は以下の通りである。 ・測定システムに関して。白色光源として高圧水銀灯、サブミリ波帯分光器としてマーチン・パピレット型分光器、検出器として液体ヘリウム冷却InSb検出器を用いる分光システムを製作し、大気中の水蒸気による吸収スペクトルの観測を行った。本測定結果より、植物あるいは生体組織といった水の吸収が極めて支配的である物体を測定対象とした場合でも十分信号/雑音比の良い測定が可能であることを明らかにした。 ・上記フーリエ分光法の他に、時間分光も可能とすることを目的に、分光用光源であるサブミリ波帯可変幅パルスの発生に関する検討を行ない、その発生に成功した。本発生装置は光照射半導体基板2枚を用い、連続サブミリ波から任意の幅を持つパルスを切り出すシステムである。現在までに波長214μmにおいて最短半値幅5nsecのパルスが得られている。
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