研究概要 |
本研究の目的は光導波路間の結合現象を利用した,広帯域な光通信用光素子の構成法をその作製法も含めて確立する事にあった。この研究課題に対して,まず,これまでに提案してきたTapered Velocity Coupler(TVC)を利用した任意比光分配器および偏波分離器の構成法の再検討を行った。すなわち,数値シミュレーションによって任意比光分配器の分配比拡大および偏波分離器のより実用的な三次元解析モデルによる特性評価を試みた。その結果,任意比光分配器では,素子形状および電極配置を変更することで,分配比の変化範囲を大幅に拡大できることを明らかにした。また,偏波分離器の三次元解析では,矩形の横断面形状を有するチャネル光導波路からなる偏波分離器を設計し,その特性を差分法による数値計算により求めることで,これまで二次元スラブモデルで取り扱った場合と同様に広帯域で効率の高い偏波分離特性を構成できることを示した。なお,これらの研究成果は口頭発表を行うとともに任意比光分配器の分配比拡大に関しては学術論文誌に投稿・掲載されている。さらに,実用的な多機能光素子の設計・作製のためには,試作条件とチャネル光導波路の構造パラメータの関係を明らかにすることが大変重要となる。そこで,ガラス基板を用いたイオン交換法によるスラブ光導波路およびチャネル光導波路の試作実験によりその基礎データを着実に蓄積している。そして,三線結合系からなる結合型光分配器を実際に作製し,その特性評価にも着手している。これらの実験結果についても口頭発表を行い,大学紀要にその基礎データを掲載している。ただ,現段階では試作導波路の基板にはガラスを用いているが異方性結晶のLiNbO_3を用いた試作実験も環境が整い次第行っていく予定である。また,多機能光素子で重要な外部電界印加用電極の最適形成法についても今後早急に取り組む必要があると考えられる。
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