研究概要 |
本研究では,E面平面回路解析法に基づく方形導波管型方向性結合器の構成法について理論的,実験的に検討を行った。ここで取り扱う回路は,E面内においてのみ回路形状が変化し,その垂直方向には一様な構造となっている。まず,方形空胴のE面内に2重鏡像対称となるように4個の入出力用方形導波管を接続した極めて簡単な回路構造を取り上げた。本回路はE面内の2次元電磁界分布に基づいて回路特性が決定されるため,方形寸法や入出力用導波管の接続位置などを回路パラメタとして,計算機により回路形状の最適化を行った。その結果,Xバンドの周波数帯において,電力分配比が1/2〜5の範囲で8〜20%の比帯域幅を得ることを確認した。更に,入出力用導波管と方形空胴の接続部に容量性窓を設けることにより,電力分配比のアンバランスの大きな回路を実現することも確認している。次に,回路の対称性を維持して,方形空胴に凹部を付加した回路について検討を行った。その結果,凹部を付加しない回路では良好な特性が得られない電力分配比の回路を実現できると共に,回路の小型化が達成されることを示した。また,入出力用導波管と方形空胴との間に幅の狭い導波管を挿入することにより,広い周波数範囲に亘って平坦な分配特性が得られることも示した。最後に回路を試作し,その散乱パラメタの絶対値並びに出力位相差の周波数特性を測定することにより,実験的にもE面平面回路法を用いた回路構成法の妥当性を確認した。本回路は,同調ポストや結合用隔壁などが不要であるなど,その形状が極めて簡潔であることから,回路寸法の小型化が要求される高い周波数領域,特にミリ波領域において,その有用性が増すものと期待される。また,大電力マイクロ波システムへの応用にも有効であると考えられる。
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