研究概要 |
カオス情報処理系と関連した,カオス制御の情報処理への応用に関する基礎的な研究を遂行した. 1.カオス制御を応用した不安定化制御によるカオス生成法を提案した.非線形常微分方程式で記述された系に安定なアトラクタが存在する場合に,そのアトラクタの線形安定性をフィードバックにより不安定化し,カオスアトラクタを得ることができた.従来のバックプロパゲーションを用いたニューラルネットワークによる最適解探索で問題となっていた,局所解に落ち込む性質は,この手法を用いて脱出させることにより克服できることも示している.カオス応答を行う自律系,非自律系,高階微分方程式系において,不安定軌道の安定化,不安定化の制御の数値実験を行い,脳の記憶想起モデルとしての基礎的な機能である,複数アトラクタを彷徨するカオス軌道についてのシミュレーションを行った. 2.アナログ神経回路付による,大規模双方向結合系,ネットワーク構造結合系の振舞いの解析を行った.興奮性と抑制性ニューロンを対にして結合すると,二次元自律系発振器となる.このニューロン対をさまざまな形で結合させた場合の解の振舞い,同期現象を解析した.対称性を崩した結合系の場合には,一般的にカオス的発振を得ることが判明した.これらのニューロン対の発振に関する分岐の詳細も検討した.また,対称な双方向結合系においては,一般的に同期現象がみられ,各ニューロン対がそれぞれ,同相,逆相などにロックする.この数理的な仕組みを,平衡点の分岐解析により説明した.つまり,平衡点のHopf分岐は,系全体の極のうち2個の複素共役な極の不安定化によってもたらされるため,この固有空間によるヤコビ行列のブロック対角化変換により,発振開始パラメータ,発振モード-すなわち同期のメカニズムを明らかにすることができた.この研究は現在も継続中であり,今後,ニューラルネットワーク構造を持たせた場合の分岐について検討を予定している.
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