研究概要 |
本研究の目的は,色および空間情報の基本処理が実現されている網膜外網状層神経回路において,自然画像がどのように受容,表現,処理されているかを明らかとすることである.また,自然画像を対象にシミュレーション解析を行う場合,細胞数や細胞間結合数など,実際の網膜の回路的特徴を忠実に記述する必要がある.従って,モデルは数100万の細胞を含んだ大規模なものとなり,シミュレーションに要する計算量は膨大なものとなる.そこで,MIMD型超並列計算機,および,仮想並列計算機(PVM : Parallel Virtual Machine)を利用した神経回路モデルの効率的なシミュレーション技術の確立を行った. まず,富士通並列処理研究センターのMIMD型超並列計算機であるAP-1000(オープン利用),および,本学情報処理センターに設置されているEthernet接続された約60台のワークステーション群より仮想並列計算機(PVM : Parallel Virtual Machine)を構成し,イオン電流機構に基づいた神経回路モデルを効率的にシミュレーションするための負荷均衡,通信方式について検討した.その結果,網膜外網状層モデルは,一様な特性を備えた神経細胞モデルを多数含んだものであり,並列計算機の各プロセッサに隣接する複数の細胞モデル割り当てることが,最も効率的であることがわかった.こうしたシミュレーション技術の確立の結果,従来ハードウェアの制約上不可能であった128×128サイズの2次元Hexagonalモデルのシミュレーションが可能となり,自然画像刺激に対する各細胞のイオン電流変化やカルシウム濃度変化をはじめて明らかとすることができた.さらに,特定のシナプス経路の遮断や,イオン電流のブロックなどをモデル上で行うことにより,各要素レベルの特性の機能的意義の解析も可能となった.
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