研究概要 |
多数の誘電物体から構成される不規則媒質中の実効媒質定数の一例として,多数の誘電体球からなる不規則媒質の等価誘電率を考え,その算定式を多重散乱理論(立居場,南部:Radio Science,vol.28,no.6,pp.1203-1210,1993年)に基づいて導出し,有効性を確認するために数値計算を行い,従来の他の方法(EFA,QCA,QCA-CP等)との比較・検討を行った。本年度得られた本研究の成果を以下に示す。 1.本研究で得られた等価誘電率算定式は,従来の他の方法が適用できないような高誘電率の誘電物体からなる不規則媒質についても,正確に等価誘電率を算定できることが確認された。また,当研究分野で重要視される等価誘電率の虚数部(コヒーレント減衰)についても,精度の高い結果が得られることを明らかにした。 2.本研究で得られた等価誘電率算定式は,精度が良い反面,従来の他の方法による算定式に比べやや複雑な記述となっているが,実用上(等価誘電率算定プログラムの作成上),特にこの分野の専門的知識が無い研究者・技術者でも十分使用できる。 3.不規則媒質を構成する誘電物体と波長のオーダが近いような場合は,等価誘電率を算定するために大型計算機やEWS等の利用が必要となるが,低周波近似が可能な領域や,特別に高精度の結果を得る必要がなければ,数値計算に用いる計算機としては,パーソナルコンピュータで十分である。 本研究では,各種リモートセンシング及び衛星通信技術の基礎研究として有用である。
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