研究概要 |
本研究は,粒状体の解析に考案された個別要素法を拡張し,アスファルト混合物の変形解析に適用しようとするものである。最初の取り組みとして,アスファルト混合物と粒状体との差異を整理し,新たに考え入れなければならない特性と数値解析の際の解の安定性を考慮して,粒子相互の法線方向の力学モデルを選定した。アスファルト混合物の最大の特徴である粘弾性的挙動,すなわち応力緩和とクリープ現象が表現可能で,基本的には流体である3要素流体モデル(Voigtモデルとダッシュポット要素を直列に繋いだもの)が最も適した粒子モデルであることを導いた。そして,通常の粒状体と最も異なる点である引張力に対する抵抗性と,圧縮と引張とで作用力が同じでないことも考慮して解析プログラムを作成した。 ここで構築した解析モデルの妥当性を評価するために圧縮および引張試験のシミュレーションを行い、実物の試験結果と比較検討した。さらに,局所的な変形挙動がシミュレートできているかどうかをアルミ棒をストレートアスファルトで固めた単純化供試体を用いて評価した。その結果,載荷開始から破壊に至るまでの比較的大きな変形過程の応力-ひずみ関係をトレースすることができ,局所的な変形も実際の試験とほぼ同様に表現することができた。 個別要素法では,粒子モデルを構成する個々の力学要素(バネとダシュポット)の物理定数をどのような考えに基づいて決定するかが問題となる。本研究では,要素の物理定数をパラメトリックに変化させた広範囲のシミュレーションを実施し,各要素の抗力と粒子集合体の挙動との関係を検討した。パラメトリック解析により,集合体の挙動は主にバネ係数と付加ダッシュポットの粘性係数および圧縮と引張の強度比によって決まることになり,Voigtモデルのバネ係数と粘性係数は解の安定性に大きく影響することが明らかとなった。特にVoigtモデル部分のバネ係数と粘性係数の組み合わせは重要である。 本研究では,時間的な制約からtime history的な検討,すなわちシミュレーションにおける経過時間と実物の挙動における時間経過の対応づけが十分に検討できなかった。シミュレーションの際の間分割Δtも含めて今後の課題である。
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