まず、実構造物における実態調査から違和感及び調和感を生じるコンクリート部材の把握及び検討を行った。その結果、コンクリート構造物を主対象とする景観はその美観性を念頭に整備することが必要とされ、躯体表面における意匠及び汚れ程度が周囲景観との調和に大きく影響することが把握された。続いて、生物系汚れ及び非生物系汚れを付着させた試料からエージング効果を有するセメント系材料の検討を行った。つまり、感性と相関関係のある色差を指標に同一程度のエージングを行った後、“趣がある"、“汚れている"等の感性で評価を行いこれを一次元尺度化し景観上プラスイメージとなる付着物質、付着特性及び付着性状の把握を行った。その結果、特に付着物質の影響として、ススの汚れに対し藻類の汚れは気になりにくく、カビの汚れはいったん認識されると小さい色差で非常に汚れが気になると判断された。上記結果をもとに、CG(コンピュータグラフィックス)を活用して実構造物にエージングを合成し、エージング効果を加味した景観設計手法の検討を行った。その結果、エージングのマイナス要素(汚れ)に対するメンテナンスは不快感及び汚れ感を念頭に整備する必要が把握された。また、コンクリート構造物表面の意匠変更及び洗浄は汚れに対する景観向上に有効であることが把握された。最後に、景観評価を推論するとともに景観向上のためのエージングの積極的な活用が可能となるエージングエキスパートシステムの構築を行い、エージングを設計・施工に反映させることが可能となった。
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