本研究は一般振動時の橋桁に作用する非定常空気力とのフラッター解析への応用に関する理論的、解析的な基礎研究である。一般振動時の非定常空気力を記述できる数学モデルとして一般Theodorsen関数および有限次数近似モデルを取り上げ、それより得られる非定常空気力係数およびフラッター解析結果を調和振動を前提とする従来のTheodorsen関数に基づく空気力モデルによる解析結果と比較検討した。平板翼空気力の作用する2次元及び3次元橋桁についての数値シミュレーションにより、以下のことが明らかとなった。 1.一般Theodorsen関数およびTheodorsen関数による非定常空気力係数および2次元橋桁のフラッター分岐経路を比較した結果、高減衰領域では有意な差が生じることがわかった。橋梁のフラッター分岐経路やアクティブコントロールに関する検討を行うためには、一般振動時の非定常空気力を用いる必要があると考えられる。 2.2次元橋桁についての数値シミュレーションにより、適切に決定された有限次数近似モデルより得られる非定常空気力係数およびフラッター解析結果は、一般減衰振動下での理論解(一般Theodorsen関数)とほぼ一致することがわかった。また、有限次数近似モデルを用いることで、調和振動のもとでの非定常空気力計測結果より一般振動下での空気力モデルを構築できることを確認した。 3.一般Theodorsen関数に基づく空気力は、風速とラプラスパラメーター(振動数および減衰)の2重の繰り返し計算を必要とするため、3次元橋桁の多自由度フラッター解析には適していない。一方、有限次数近似モデルは、空気力係数マトリックスを風速のみの関数として表すことを可能とするため、多自由度フラッター解析に対し有効である。
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