研究概要 |
鋼,Al-Mg合金,純銅試験片による反転および繰り返し大ひずみねじり試験を行い,大ひずみ領域での金属の力学的挙動を調べた.その結果,50%を越えるひずみ領域ではいわゆるバウシンガー効果はほぼ消滅することを確認した.また,軸方向伸びを許した試験では,ねじり方向反転直後に試験片の縮みが生じるという,Swift[Engineering,1947]の実験結果の再現性を確認した.また,軸方向伸びを完全に拘束した試験では,初期ねじりによって生じる圧縮の軸力は,ねじり方向反転後,引張に転じた後再び圧縮に移行することを確認した. これらの実験事実より,大ひずみ領域では塑性異方性の発達が無視し得ず,異方性の強さのみならず異方性軸の回転も重要な要因であるとの洞察を得た.これに基づいて,異方性軸の発達および回転の法則を陽な形で含む新たな塑性論を提案した.具体的には,異方性降伏曲面,塑性スピンによる異方性主軸回転則,連合流れ則の3要素からなる比較的簡明なモデルである.この単純ではあるが大ひずみ領域に於ける現象を表すに足る要素を取り込んだ材料構成式は,上記の種々の実験事実を明確に説明しうることを示した.また,発達する異方性の一つの表現方法として従来移動硬化則が用いられてきたが,同硬化則は大ひずみ領域においては許容しがたい矛盾を含むことを示した.さらに変形理論,コーナー理論の類も従来用いられてきたままの形式では,大ひずみ領域において,特に反転載荷を含む場合には使用できないことも明示した.(これらの理論的検討と数値例はInt.J.Plasticity誌に掲載決定.)
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