研究概要 |
地下発電所の水路トンネルや圧縮空気貯蔵発電システムなどには、各施設の稼動とともに周期的な繰り返し応力が作用する。この繰り返し応力は,岩盤に疲労を生じさせ、設計時における強度・変形特性を大きく劣化させると考えられている。 本研究では,この岩盤疲労の問題について次の2つの側面から検討を行った。 1.繰り返し応力下における岩盤材料の変形強度特性 ここでは三軸圧縮応力下における疲労試験とクリープ試験を実施し,その結果を最小ひずみ速度に着目して整理した。その結果,疲労試験およびクリープ試験における最小ひずみ速度と破壊までの載荷時間の関係は、両対数グラフ上でともに逆比例関係を示し、その勾配はほぼ同じであることがわかった。しかし同じ載荷時間で破壊に至る場合、疲労試験のほうが最小ひずみ速度が大きい。これは両試験では平均的な載荷速度が異なるために、軸応力一軸ひずみ曲線の外形が異なるためであると考えた。 2.顕微鏡下変形試験による割れ目のせん断過程の観察 ここではまず実体顕微鏡下において直接供試体の表面構造を観察しながら岩石の圧縮試験を行うことのできる試験装置を開発した。この装置を用いて破断させた岩石材料の一軸圧縮試験を実施した。その結果,変形に伴い、ブリッジ部分の回転・切断、asperityへの乗りあげ、open crackの発生が見られる。供試体全体を観察すると、せん断部分と開口部分が交互に分布していることがわかった。また実験後の供試体より岩石薄片を作成し観察した結果,表面で観察されたせん断部分と開口部分が繰り返す構造が供試体内部においても確認できること、実体顕微鏡では観察できない微小なクラックが割れ目沿いに発達していることがわかった。
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