研究概要 |
北海道において特有な現象である,冷気流をともなった雪雲による降雪現象の解明のため,カイト気球による観測を昨年まで2年連続で行ってきた.冷気流は,放射冷却現象により発生した冷気塊が周りの空気より密度が大きくなることにより,二層流のごとく山地斜面に沿って,川の流れのように流下する現象である.そのため,その構造は鉛直方向に地表面から300m程度までの間において温度・湿度に大きな変化(温度であれば地表面から100m程度まで上空温度より5℃程度低くなる)をもつ. 昨年までのカイト気球観測において,2ケースほどの冷気流をともなった雪雲を観測することが出来た.その時の上空季節風風速は西風に近いものであった.本年度も,昨年までとどうように1ケースの冷気流をともなった雪雲を観測することが出来たが,上空季節風風速が北風であった.これまで数値計算により,季節風風速・風向が冷気流張り出しおよび雪雲形成形状に大きな影響を与えることが分かっており,昨年までと異なったカイト気球観測を行うことが出来たことは,非常に有用なデータを与えると考える.更に,今年度からは『衛生ひまわり』のデータを入手することが出来ており,レーダデータだけで判断していた冷気流をともなう雪雲が,より広範囲な視点から確認された. 先に述べたが,数値計算も平行して行い,昨年までの冷気流をともなった雪雲の再現計算を行い,良好な結果を得た.更に,数値計算は仮想の条件での冷気流の推移も計算できることから,数ケースの計算を行うことにより,冷気流のさまざまな条件の違いによる張り出し結果の変化についても知ることが出来た. 今後は,より多くの観測・数値計算による再現を行い,予測可能であることを示し,雪害対策へと役立てたい.
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