研究概要 |
1.渡良瀬貯水池(総面積4.5km^2)とその北側の池(0.02km^2)の規模が異なる2つのサイトで,2日間の同時水質観測を行なった.観測機関は8月6日〜8日.観測項目は,水温,pH,溶存酸素,アンモニア性窒素,リン酸態リンの鉛直分布である. 2.観測結果から,日中は日射により水温成層が形成され,夕方から夜間に風が吹いて成層が焼失するパターンが見られた.そして,成層の形成に伴い,底部での溶存酸素濃度が低くなり,そのために,底泥からのリンの溶出が促進されることも確認できた. 3.2つのサイトでは,気象条件は同じはずであるが,水温成層の状態はかなり異なっていた.特に,貯水池では風が強くて成層が明確に形成されない時間帯でも,北側池では明確な水温成層が形成されていた.これは,サイト周辺の地被状態(粗度)ならびに水域規模の相違に起因するものと考えられる. 4.そこで,風の吹送距離を含む無次元パラメータとして,Wedderburn数を取り上げることにした.そして,水温成層の時間変化から推定した各時刻での拡散係数とWedderburn数との対応関係を検討した.その結果,両者の間には明瞭な関係が見られ,しかも2つの規模が異なるサイトでの変化特性は,ほぼ同じであった. 5.以上より,水域規模により水温成層の形成の仕方が異なり,それに伴い水質動態も影響を受けること,またそうした水域規模の影響はある程度Wedderburn数で整理できることがわかった.
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