研究概要 |
水表面近傍の乱れが気体輸送に及ぼす効果を定量的に解明することを目的として基礎的研究を行った。本研究では,乱れの効果のみを抽出するために振動格子乱流場を研究対象としている。乱流気体輸送に関する応力方程式モデルを定式化し,これらの数学モデルと既存の実験データを詳細に検討することによって,水表面近傍の乱れが気体輸送速度k_Lに及ぼす効果について幾つかの知見を得た。振動格子乱流場は,水表面から積分スケール程度の領域でのみ乱れ分布が変形する。この変形特性は,鉛直方向の乱れ強度に対する水表面での境界条件に対称条件を課した解析では再現できない。これは,圧力-歪み速度相関項と境界条件の両者に問題があり,鉛直乱れ強度をゼロに設定した境界条件の計算結果は実験値と良好に一致する。k_Lを正しく算定するためには,濃度境界層を十分な格子点で解像する必要がある。本解析では水表面近傍において積分スケールを200点程度で離散化した。乱流計算から算定されたk_Lは,定量的には実験値よりも大きな値を取ったが,これは解析において界面活性等に関する影響を考慮していないためと推察される。しかし,k_Lが乱流レイノルズ数の-1/2乗に比例するという実験結果の特徴は極めて良好にシミュレートできた。また本研究では,表面更新率を乱れエネルギーとエネルギー散逸率でモデル化し,k_Lの評価式を提案した。水表面での気体輸送機構を解明するためには,水表面近傍の乱流構造を高精度で定量化しなければならない。本研究では,LVDをトラバース装置で昇降させ,水表面近傍の乱流構造やk_Lを高精度で計測するための実験システムを整えた。このシステムにより,モデルと実験値のより詳細な比較検討が可能となった。今後、これらの実験システムを用いて、気体輸送速度の普遍定量化と乱流モデル解析の高精度化について研究をさらに進める予定である。
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