研究概要 |
本研究では,自家用車利用者を公共交通機関の魅力を高めることによって,公共交通機関へ転換させることにより,都心部への流入交通量の抑制を図ることを目的として研究を進めてきた。具体的には,交通需要マネイジメントの一政策であるパークアンドライド(P&R)システムの導入効果に関する分析およびP&Rシステム転換者数を予測する交通手段選択モデルの推定を行った。 P&Rシステム導入にあたっては,その導入位置や規模,料金の設定が重要となってくる。そこで,本研究では,仮想的な都市にP&Rシステムを導入し,解析的に導入位置や規模,料金が満たすべき条件を求めた。その結果,利潤最大化行動をする地域独占的な交通企業がP&Rシステムを運営する場合の運行頻度やシステム料金と社会的最適な条件を満たす運行頻度やシステム料金との間には乖離が生じていることが明らかになった。したがって,P&R導入にあたっては,社会的な費用を最小にするよう関連自治体は積極的に関与すべきであろう。 熊本市ではP&Rシステム導入の試行実験が実施され,また今後も実施される予定であるが,これらに関して事前にアンケート調査実施し,交通手段選択モデルの推定を行った。その結果,自動車通勤者は交通費用より駐車料金に敏感に反応することが明らかになった。したがって,都心部の駐車料金を増額すれば,通勤を公共交通機関へ転換させる可能性があることが分かった。 現在,P&R試行実験から得られたデータにより,P&Rシステムがもたらす時間短縮効果や都心部駐車容量の削減効果およびNO_XやSO_Xの削減効果等環境の面も含めた効果について分析中である。また,商業地域への買い物行動のモデル化にも現在取り組んでおり,今後はこれらの研究と合わせて総合的な交通抑制政策に取り組んでいく。
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