研究概要 |
近い将来のわが国は,人口に高齢者の占める割合が高くなり,超高齢社会の到来が予想されている.高齢者・障害者の現在の移動性や外出に対する潜在的な需要を把握し,交通活性を高めてゆくことはこれからの重要な課題である.この研究は,高齢者・障害者の潜在的な交通需要を把握することにより,高齢者・障害者の移動が増加する要因について分析し,潜在的交通需要を高めるような施策について考察をした. この研究では,まず,高齢者の潜在交通について,いくつかの要因を考え,過去の調査から現状を把握した.つぎに,今回は車いすを利用している人を対象に潜在交通が顕在化するための要因について考察するために,アンケート調査を実施した.得られた知見として, 1.生活スタイル・就労環境・移動の困難性から高齢者交通の実態を見た.その結果,高齢者は加齢とともに交通活性が低下し,外出に関して困難を感じている一方で,日常生活で外出の多い高齢者は交通活性の高いことがわかった.とくに,無職者よりも有職者の方が外出頻度が高く,就労に関する環境によって外出の活性は高まってくるものと思われる. 2.車いす利用者を対象とした調査から,バス,鉄道,タクシーに関して「利用したことがない」という人がかなりいること,整備希望として,「交通機関」,「公共施設」,「歩道」,「店舗」の改善が望まれていることから,公共交通機関の整備が外出需要を増加させる要因であることがわかった.また、車いす利用者が外出するときの「情報不足」が車いす利用者の外出を妨げる一要因であることも分かった. 今回の研究から,施設に対する個別の整備だけでなく,就労に関する環境や生活スタイルの変化を考慮に入れた,一体的な環境整備によって,高齢者・障害者交通の潜在需要は顕在化することがわかった.
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