研究概要 |
阪神大震災に見られたような、柱梁溶接接合部の高応力脆性破壊(部材が塑性化した後に脆性破面を呈して破断にいたる破壊)の発生要因を明らかにするための基礎的研究として、柱梁接合部をモデル化した十字型模型試験体による二軸載荷実験を行った。実験は、破壊に影響を与える要因の内、繰返し荷重,多軸度,鋼材及び溶接金属の切欠き破壊靱性値の影響に注目し,以下の水準で行った。 ・繰返し荷重の影響-単調引張り載荷,繰返し載荷後引張り載荷(溶接部のひずみ+1%⇔-1%を5回繰り返した後単調引張り-以下繰返し載荷と称す)・多軸度-梁部材の幅厚比 D/t=2,3,5(柱方向は0.7σyの引張り荷重)・破壊靱性-試験体温度 常温,低温(一般に低温になると破壊靱性は低下する。よって、試験体温度で破壊靱性を変化させた。低温試験時の温度は、母材および熱影響部のシャルピー衝撃試験結果から得られるエネルギー遷移温度以下とである-40℃とした。) 実験の結果、単調載荷では溶接部に初期欠陥として機械切欠きを入れていたにも関わらず母材部で破断した。これに対し、繰返し載荷では常温低温ともに溶接部で破断した。常温試験と低温試験を比較すると、常温時繰返し載荷では延性破面を呈する延性破断であったのに対し、低温時繰返し載荷では脆性破面を呈する高応力脆性破断であった。高応力脆性破断の場合は、延性破断に比べ伸びが著しく低下し、吸収エネルギーも延性破断の半分以下に低下することがひずみゲージによる測定および残留ひずみの測定によっても確認された。これらにより、低破壊靱性時において地震のような部材が降伏する程度の繰返し載荷を受けた場合、高応力脆性破壊が発生する可能性があることが実験的に示された。なお、多軸度の影響については試験体に溶接欠陥が生じていたため、現在試験体の再製作を行っている。これらの試験の結果と合わせ論文発表する予定である。また、今後さらに低応力脆性破断の発生条件の定量化を目標として実験および解析を重ねていく予定である。
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