研究概要 |
はじめに,豊田市の小中学校校舎の中から構造形式がほぼ等しいと見做される4階建校舎21棟を選定し,建物-地盤系の微動計測を実施した。建物周辺地盤の振動特性は,表層地層図や地形分類図に,市内62箇所で実施した地盤の微動計測結果を関連させて算定した。その結果,21棟の建物周辺地盤の卓越周期は0.1〜3.0秒と幅広く分布し,それらは表層地盤の地質や堆積地盤の深さと良い相関があることが確認された。次に,建物の固有周期を地盤上との伝達関数やコヒーレンスから算定した結果,学校校舎の固有周期は長辺方向(0.2〜0.25秒)が短辺方向(0.1〜0.2秒)に比べてかなり長いことと,地盤の固有周期が長くなるほど建物周期も長くなる傾向があることが判明した。さらに,21棟の建物の長辺方向と短辺方向の固有周期(Tb)と表層地盤の卓越周期(Tg)の大小関係に応じて建物-地盤系の増幅特性を算定した結果,ほぼ同じ建物の建物-地盤系の増幅特性は共振する場合(Tb=Tg)と表層地盤の卓越周期が長い場合(Tg=2.0〜3.0秒)に増大することが判明した。最後に,1995年1月17日に起きた兵庫県南部地震でのRC造建物の被害状況を,阪神地区合同微動観測の結果から推定した建物周辺地盤の卓越周期(Tg)と,福岡市や仙台市での微動計測結果から推定した建物の固有周期(Tb)との大小関係から分析した結果,震度7の地域については両者が共振する場合(Tb=Tg)に被害率が最大となることが分かった。したがって,都市建物の耐震診断や震災危険度を評価する場合には,表層地盤の振動特性と建物各方向の振動特性とを合わせて考えることが必要であり,特に両者の固有周期が近い場合には十分な補強を行うことで建物強度を増すとともに建物周期も短くして共振させないことが重要であると考えられる。
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