研究概要 |
高軸力で繰り返し水平力を受けるRC柱は,軸力を保持できず,早期に崩壊するのに対し,芯となる鉄骨が挿入された合成柱は,高軸力下で大変形に至っても,曲げ耐力は徐々に落ちるが,軸力保持不能となる崩壊には至らない設計が可能であろうとの予想をたて,芯鉄骨挿入合成柱の耐震性能を把握する目的で載荷実験を行った.鉄骨は曲げに効かせず,主に軸力に抵抗できる要素とするために,せいの小さな断面とした.試験体は,コンクリート断面が20x20(cm)の断面で,せん断スパン比4の柱部材とした.試験体数は14体である.実験変数には,(1)内蔵鉄骨の有無,(2)鉄骨形状(H形鋼と鋼棒),(3)鉄骨量(鉄骨断面のコンクリート断面に対する比で3%と5%),(4)軸力比(SRC規準に定める制限軸力および鉄骨圧縮耐力の1.3倍の軸力),(5)フ-プ筋量(帯筋比で0.8%と0.4%)である.コンクリート断面せい20cmに対し,内蔵H形鋼のせいを6cmとした.加力は,軸力を柱部材に載荷し,一定に保持した状態で,部材角0.5%を単位とし,各変位振幅で一回繰り返す漸増変位振幅で,準静的に水平力を載荷した.柱の載荷実験を行った結果,以下のことが明らかとなった.SRC規準に定める制限軸力が作用する場合,RC柱は部材角2%で軸力を保持できず,崩壊したのに対し,芯鉄骨挿入合成柱の場合は,部材角が4%に至っても,軸力保持不能の崩壊とはならなかった.さらに,芯鉄骨として,鋼棒を挿入した柱が,H形鋼を挿入した柱に比べ,最大耐力発揮以降の耐力の低下の割合が少なく,軸方向の縮みも小さい結果となった.芯鉄骨挿入柱であれば,せん断補強筋比が0.4%程度の帯筋量でも,載荷軸力が芯鉄骨の圧縮耐力の1.3倍程度の軸力比であれば,軸力を保持できない崩壊形とはならなかった.
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