研究概要 |
勾配屋根の屋根雪を自然滑落させるため,暖房廃熱を利用して滑落促進する場合の諸性状に関して明らかにした。その結果,以下のことが明らかとなった。 1)比較的多量の降雪がある場合の外気温は氷点下となる場合が多く,その温度の影響で屋根雪は屋根面に凍着し,その抵抗力が滑雪力を上回るので滑落雪現象は発生しない。しかし,小屋裏への断熱を緩めると,屋根からの伝熱によって屋根面がほぼ0℃に保て,凍着を抑制できる。この場合,住宅の実験結果からみると,小屋裏温度を+3〜+5℃程度にすれば凍着現象を抑制できる。なお,屋根葺き工法の違いによって実質的な屋根の温度が異なることから,屋根面に対する伝熱が効果的な葺き工法にすることが有効と言える。 2)屋根葺材と屋根雪との間に作用する摩擦抵抗力は,屋根葺材の表面粗さおよび屋根雪の物性に大きく関わる。すなわち,少量の積雪では滑落しない屋根雪が屋根上で変態することが,滑雪性状に大きく関わることが明らかとなった。このことは摩擦面の屋根雪がしまり雪からザラメ雪に変化する現象であり,この現象を正しく評価できなければ適切に屋根雪を滑落制御することが出来ない。そこで,表面粗さの異なる材料と雪粒子径の異なる雪を用いた滑雪実験を行った。その結果,雪の粒径および材料の表面粗さが摩擦性状に大きく関わることが明らかになった。このことは,屋根雪の滑落時に作用する摩擦抵抗力を正しく評価するための重要な結果である。 以上のように,小屋裏に熱を供給することによって,屋根雪の凍着は抑制できるので,滑落雪を促進することは可能になるが,その場合の摩擦抵抗力を正しく評価するには,積雪後の雪の変態状況を適切に判断する必要がある。すなわち,過大なる熱供給で融雪させながら滑雪促進することは出来るが,少ない熱供給で滑落させることを考える場合は,その過程における雪物性の変化を推定しなければならない。
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