研究概要 |
本研究では,陸屋根を芝生植栽で緑化することを高温化しつつある都市におけるパッシブ的熱環境調整手法と位置づけ、従来その取り扱いが曖昧であるその熱水分特性について実験的検討を加えた。 一般的天然土壌である真砂土(まさつち)およびその軽量性から屋上被土によく用いられる人工軽量土壌の2種について、芝生植栽を施すもの、施さないもの、計4種の試験体を製作し、屋外環境下で、表面・地中温度、芝葉面温度、表面・地中熱流、含水率、蒸発量等を外気温度、外気湿度、日射量、放射収支量、近傍風向・風速、雨量等の外界気象条件とともに、長期間にわたり連続測定した。これにより得られた実験データを基に、まず芝生を含む屋上被土の伝熱モデルの構造を明らかにした。従来、屋上緑化を対象とする伝熱モデルに関しては,精粗にわたり数種が提案されている。本研究では、これらを参考としながらも、水分移動モデルとの整合性、都市・建物熱環境評価モデルに組み込む際の定量モデル全体としての精度バランス等を考慮しながら、実験データに基づき、被土を含む芝生屋上緑化の伝熱モデルの構築を行った。 以上により、潜在的普及ポテンシャルが大きいと思われる屋上緑化による都市の地表面熱収支構造の変容が、都市高温化に及ぼす効果を精度よく予測し得る定量モデル化を構築する基礎が確立された。
|