研究概要 |
阪神大震災の延焼地域について被災状況の分析及び既存モデルによる被害の検証を行った結果,今回の被害は,建物単体火災と既存の延焼危険評価モデルが前提とする都市大火の中間的なレベルであったことが確認された.それ故,震災以降,被害から得た教訓として社会的に定着しつつある諸説は,今回のような被害に対しては当てはまるが,都市防火対策として普遍性を必ずしも持たないことを論証した.そして,何某かの都市防火対策を考える場合,それが対象とする都市大火のレベル,換言すれば目標安全水準について議論されるべきであり,それ故,延焼危険の評価においても安全水準の設定が組み込まれるべきであると指摘した. 以上をうけ,上記条件を満たす新しい延焼危険の評価モデルを提案した.提案に先立ち,市街地火災は建物の隣棟延焼の複合体であるとの前提にたち,隣棟間の延焼過程に着目して既存の多様なモデルの一元化を試みた.しかし,基本アプローチが全く異なること等の理由によりそれらの整合性は低く,一元化のためには更なる研究が必要との結論に達した.そこで,一元化は今後の課題として残し,隣棟間の延焼は未知定数として評価モデルに取り込んだ.安全水準の設定は隣棟間の延焼限界距離として組み込んだ. その結果,延焼危険は都市計画的政策で制御可能な4つの変数を持つ以下の式で表現可能であり,その関数はα,βに対し閾値を持つことが明らかになった.同時に,安全化のための市街地整備はある安全水準に対応するものとして行われるべきものであり,ある程度の整備が行われなければ延焼危険の低滅に寄与しないことが理論的に裏付けられた.市街地の延焼危険=f_i(α,β)α:木造率,β:隣棟間隔/f(隣棟間の延焼限界距離,個々の建物の燃焼力),i:建物の配置パターン 残された課題は,隣棟間の延焼過程の解明による上記結論の数値的具体化である.政策に反映させるためには不可欠である.
|