南西諸島地域の伝統的居住地空間における生活領域構成の特質としては、とりわけ共有性を帯びた領域が指摘領域、公的領域の間に濃密に存在することがあげられる。 本研究においては、まず沖縄県の歴史的経緯の特異性のもとで「シマ」の共同体と土地所有と空間管理がいかなる過程をたどったかについて総論的検討を行った。共同体の規範である「村内法」及び旧慣温存策前後の土地制度の軸として作業を進めた結果、空間に対する共有制の基本的性格を時系列に沿って明らかにすることができた。 さらに事例検討のため、沖縄本島南部の島尻地域から南風原町城と糸満市域の全字の空間的骨格の変容比較を行い、腰当(クサテイ)森の形状の変化をはじめ、基本的な共有領域が特に本土復帰後の開発行為により性格を変えていることを明らかにした。これらのうちから2つの典型的な地区(字)を選定し、居住者の生活行動様式と領域意識等の分析、地区の祭祀や象徴的空間をもとにした領域骨格の分析、地区史料をもとにした共同体運営と共有空間の管理、処分、維持、保全過程の分析を行った。事例数の少なさによる限界はあるものの、(1)丘陵緑地、湧水と集落宗家を中心要素とした領域構成の骨格の説明モデル、(2)沖縄戦後の復興期と本土復帰前後が転機となる共有空間の運営史の記述、(3)領域の共有性の弱体化や共有主体の混乱という現時点の課題整理、について2地区のケーススタディをまとめることができた。
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