本研究は、平成8年4月から平成9年3月までの1年間において、概ね4つの作業によって行った。 1)文献資料の収集・検討 日本において、中国の都市建設・計画、文化財保護に関する学術図書と各種の非出版物を収集した。中国において、主に各種の政令、記録、都市計画図、研究論文、研究報告書、写真等を収集した。 2)ヒアリング調査 日本において、中国の都市計画、特に保存計画に関する研究を行っている者(国際連合地域開発センター、東京大学、京都大学、大阪大学、立命館大学等 1996.7、1996.11)を対象に調査を行った。中国において、本研究に関係の深い研究者(主に清華大学、同済大学、天津大学及び中国城市規劃設計研究院等のコンサルタント)と行政担当者(主に中国建設部、中国国家文物管理局、中国城市規劃学会等)を対象に調査を行った(1996.6 1996.9)。 3)事例都市フィールドサ-ヴェイ 北京市を中心に、歴史文化都市保護制度に基づき指定された保護地区(国子監保護区)を通じて、都市計画における各レベルの保護規制手法を考察し、保護制度の問題点を検討した(1996.8、1996.9)。 4)資料・結果の検証及び研究のまとめ。 本研究の結果からは、1)中国大陸における歴史的環境保護に関する全体の発展経緯は「建造物・建造物群〜都市〜地区」という3つのレベルに軸を置き、段階的に生成してきたこと、2)都市計画における面的保護体制は都市総体規劃(マスタープラン)、分区規劃(ゾーニング)、詳細規劃(実施計画)という3つの都市計画制度及びその規制によって成立していること、3)歴史文化都市保護制度は事実上は都市計画制度であり、都市計画に「保護」という視点をもたらしたとはいえ、その役割は都市計画の枠組みに限定されていること、という3点が明確に導き出された。 今後、中国の国家級歴史文化都市(1997年3月現在99都市)で策定された保護計画を主な題材として現在中国の都市計画における保護のあり方の全体像を体系的に提示する研究を予定している。
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