研究概要 |
入居者をグループに分けたケアを実践可能な物的環境条件を備えている施設を抽出するために,全国の特別養護老人ホームへの郵送調査をおこなった。調査内容はおもに施設平面図に関するものであり,323施設からの回答を得た。回答施設の建築条件を捉えるため,入居者生活単位(フロア)ごとの,定員,居室定員別室数,共用空間数(食堂・デイルーム)などを整理した。また,同時に痴呆性老人の人数,日中・夜間の介護職員数についても整理し,これらのデータに基づき,地域別,設立年代別に集計をおこなった。 その中から具体的な結果を東京都内の施設について以下に示す。回答施設は1990年以降に設立された施設が約半数(47.1%)を占め,痴呆性老人の入居率は定員比の4〜6割という施設が最も多かった(35.4%)。設立年度別にみると,施設定員は新設ほど少なくなる傾向にあったが,入居者の生活単位の規模については差がみられなかった。ただし、1生活単位が30人以下の区画(棟・階など)をもつ施設が1990年以降に多くみられた。痴呆性老人の分離タイプ(これまでの特養調査より)と今回の調査とのクロスでは,痴呆性老人を分離してケアしている施設の規模が小さく,談話などのできる場所(空間)数が多いことが捉えられた。図面調査の中から,グループケアの物的条件を備えていると思われた6施設には,別途ヒアリング・訪問調査をおこない,空間の使われ方,ケア状況を観察した。高層化による上下移動や,生活拠点の分散による寮母数の不足などの問題が明らかになった。
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