研究概要 |
研究計画に従い、ゾル-ゲル法によるSr_2KNb_5O_<15>(SKN)薄膜の合成の検討を行ったとこと、以下の結果が得られた。適切な出発原料(金属Sr,KOEt,Nb(OEt)_5)および溶媒(エタノール)を選択し、各金属アルコキシドの溶液中での反応を制御することにより、均一なSr_2KNb_5O_<15>(SKN)前駆体溶液が調製できた。この前駆体溶液について、^1H,^<13>C,^<93>Nb-NMR測定を行い、その構造について調べた結果、SKN前駆体はSr[Nb(OEt)_6]_2とK[Nb(OEt)_6]からなる高い対称性を有する複合アルコキシドであることがわかった。この溶液から調製したSKN前駆体粉末は、600℃で良好な結晶性を有するタングステンブロンズ相へと結晶化した。薄膜合成には基板としてシリカガラス、MgO(100)、Pt/MgO(100)を用いた。SKN前駆体溶液を用い、デップコーティング法によりシリカガラス基板上に調製したSKN薄膜は、600℃以上の温度でタングステンブロンズ相へ結晶化した。しかし、この薄膜は多結晶膜であった。一方、MgO(100)およびPt/MgO(100)基板上にSKN薄膜を調製した場合には、c軸(分極軸)配向膜が得られた。結晶相については、タングステンブロンズSKN粉末のラマンスペクトルと比較することにより確認を行った。この薄膜を走査型電子顕微鏡で観察を行ったところ、クラックやポアのない均質・平滑な膜であることがわかった。また、この薄膜は広い波長領域で優れた透光性を示すこともわかった。MgO(100)基板上のc軸配向SKN薄膜をX線ポールフィギア測定によりその配向性について解析した結果、2つの異なるSKN結晶格子がMgO(100)上にMgOのa軸に対してSKNのa軸が18.5℃の角度をなして成長していることがわかった。Pt/MgO(100)基板上のc軸配向SKN薄膜の誘電特性の評価を行ったところ、キュリー温度は約70℃であり、室温での誘電率は約590(1KHz)であった。
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