2次非線形光学材料はポッケルスセル、倍波変換素子、光導波路などの光変調素子、ならびにフォトリフラクティブ効果を利用した光メモリー材料を中心とするデバイスヘの応用が期待される。本研究では、電気双極子を提供する化学種として強誘電体結晶を含有するガラスを作製し、2次非線形光学効果の発現を試み、デバイスへの応用を目指すことを目的とした。具体的な研究成果を以下に要約する。 強誘電体結晶として大きな2次非線形光学効果が観察されているBaTiO_3を選択し、これを結晶相として含むテルライト系透明結晶化ガラスを作製した。テルライト系ガラスの屈折率はBaTiO_3のそれと非常によく似ており、サイズの大きな結晶相が析出しても透明性を維持できるという利点がある。まず15BaO・15TiO_2・70TeO_2ガラスを作製し、これを380℃で核生成を行わせたのち430℃で結晶成長を行った。これによりBaTiO_3が結晶化した透明結晶化ガラスが得られた。Makerフリンジ法を用いた光第二高調波測定より、入射角が0゚のとき第二高調波強度は最も大きく、入射角の増加とともに第二高調波強度が減少することが明かとなった。また、試料をBaTiO_3のキュリー温度よりやや高温(130℃)で3kVの直流電場をかけてポーリングすると、第二高調波強度は5倍程度上昇した。一方、20BaO・10TiO_2・70TeO_2ガラスを390℃で5時間熱処理すると表面結晶化が起こり、正方晶のBaTiO_3が(101)配向で析出した。この異方牲の結果、この試料においても第二高調波発生が観察され、結晶薄膜の対称性を反映して第二高調波強度は入射角が0゚のときゼロ、入射角が約40゚のとき最大となった。すなわち、本研究で得られた透明結晶化ガラスはいずれも2次非線形光学効果を示すことが明らかとなった。
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